予兆
それは──まだ、僕が幼かった頃の、記憶。
四筒郷保育所での終業式を終えた後、幼馴染みの明日菜と保育所にある公園で一緒に遊んだ。
はしゃぐくらい、沢山遊んだ。
遊び疲れるくらいに。
そんな時、僕は人の姿をした──黒い何かと出会った。
どんな人だったのか分からなかったけれど、黒い何かはこう言ったんだ。
「君は子供だから、まだ食べない。」──と。
そうして黒い何かは、何処かへ去ってしまった。
僕は何処かへ行った黒い何かの後を追おうとした・・・でも僕は明日菜に引き留められた。
「だめ。」
「え?」
「どうして?」
「私には、幽霊とか化物とか視えちゃうの。知ってる?」
親友である明日菜は、珍しく‘‘霊が視えてしまう’’のだ。
明日菜は僕に、静かにこう呟いた。
「あの人に、連れて行かれたら──駄目。」
「彼の世へ連れて行かれるから、お家に帰らなくなってしまうから。」
黒い何かとの再来は少し、一刻と近づいている──。
0コメント