血染めのいばら姫
1/はじまり
むかしむかし、人々の灯りが灯し始めた頃のお話。
この星は色々あって、たくさんの魂達と付き合って来ました。
人の姿をした魂から動物の姿をした魂、人に化けた妖と獣に化けた妖。
さらには、海を泳ぐ魚たちから空を浮遊する鳥と幻獣まで。
太陽と月はそれらと一度もお話をした事もありませんが、それでも大勢の魂達を愛情を注ぎ育んでいきました。
そんなある日のこと。
この星に悪いお化けが現れ始めたのです。
悪いお化けに翻弄される魂達は戦う力は無く、多くの魂達は命を奪い去っていきました。
太陽と月は初めて自分の危機を感じていた。
その声を聞き付けた天使様は、この星に舞い降りました。
「失った魂の代わりに、私が君を救ってあげよう。」
その姿は紅い紅い羽根を生やし、まるで人に似たような存在でした。
天に喚ばれた天使様は、悪いお化けをやっつけてくれました。
天使様に命を救ってくれたんだと、魂達は感謝の気持ちで一杯になりました。
天使様は自分の魔法の力を分け与え、その紅くて優しい瞳で約束します。
天使様は喜んで魂達を天使様の一員として認めました。
こうして世界には本来人ではない天の子供が生まれるようになったのです。
2/グリムテイカー
退魔師──。
地球の代行者として意志を持ったまつろわぬ民はそう呼ばれました。
天使様から授かった魔法の力を使い、人の心の闇を喰らう悪霊達を祓います。
天使様がいなくなった後、古の時代から現代まで、此の世に蔓延る闇と戦いました。
けれど。
人の心の強さが無ければ、人は闇へと堕ちるだろう。
不夜の城にはもう、誰もいない。
業はとても深く、咎は重く。
罪は知らず、罰さえ誰も与えずに。
お姫様は、今日も罰を受けられて夢を見ます。
別に夢を見るのが好きなわけではなく、楽しくはありませんでした。
彼女は今日も真っ赤な一日を過ごします。
彼女には、生きる希望も夢など無かったのですから。
3/薔薇の皇
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