人は傲慢であれ

「死んだ罪の無い人は恨みに取り憑かれ──、禍鬼(マガツキ)となる。」

放課後、僕と刀真は学院の屋上にいた。

刀真は僕の初めての友人で、退魔師一族・夜桜院財閥の跡継ぎでもある。

まあ確かに、僕は難しい事や話にならない事は苦手だけど。

「はあ・・・。」

「死んだ人は恨み狂い、死者は異形の化物・・・禍鬼になるんだ。」

そう言った刀真は、会話を継続して僕にその術を教え掛ける。

「禍鬼を祓うことが出来るのは、若き異能の力を宿した者──それが退魔師だ。」

異能力者、又は退魔師。

異形の化物・禍鬼と戦う使命を持った若き異能の力を宿した者。

かつて人の命を脅かす悪霊、カロウス伯爵やもぺもぺさんなど・・・数々のSS級の禍鬼を退治したこともあり、弟の龍馬と一緒に禍鬼達と戦ったという──。

「心剣って知ってる?」

「心の剣と書いて「心剣」という・・・だから、心剣なんだ。」

心剣というそれは、想像力が作り出す「異能を得た意思の像(ヴィジョン)」で、人々の「陽の気」「善意」が具現化した物で、古来より存在する魔を祓う力の一つでもある。「剣」とあるが、その形状は刀剣に限らず、異能力者それぞれによって大きさも形も本数も様々。

「槍とか、手裏剣だとか・・・?」

「心剣紋章には、それぞれ七つの属性がある。」

「火・水・雷・風・闇・光・無──。それぞれ心剣の属性も様々なんだ。」

「そっか、ありがとう刀真。」

ふむふむ、成る程。

「僕も一寸だけ、理解出来たみたい。」

「どういたしまして。」

「ねぇ、研次朗──」

刀真が僕の顔が近づいてくる。

そして刀真が、僕に語り掛ける。

「・・・「人は傲慢であれ」って意味、知ってる?」

それは、クラスの皆にも知らない言葉だった。

それを知るのは、まだ僕が参年生になる直前のことだった。


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